有病者の血圧測定とアンケートの有効性について

     山形市・冨田歯科医院

       〇冨田 滋

はじめに

 近年、臨床歯科開業医においても、有病者の受診は増加している。特に循環器疾患の占める割合は多く、歯科処置の障害ともなり、事前の疾患の把握が必須となる。  血圧測定は循環器疾患の有効な検査手段の一つであるが、高率で所有はしているものの、実際に活用している割合は低いようである(1。  当院では、開業以来必要に応じて血圧測定を行ってきたが、患者が記入したアンケートに記載されない、思わぬ高血圧等に遭遇することがある。そこで、初診時の血圧値とアンケート中の、特に全身疾患との関連性について整理したので報告する。

 対象および方法

 対象は1986年から1992年までの7年間に来院した20才以上の初診患者3521人で、アンケートならびに問診による全身疾患を疾患分類別に 算定した。この内初診時に血圧測定したもの1989人について、年齢別血圧値と、血圧分類(WHO/ISH1993)(2を厚生省監修平成6年国民栄養調 査平成8年版(3の血圧値と比較した。さらに、40才以上のものにつき、高血圧症に対するアンケートの有効性についてスクリーニング検査を行った。

結果および考察

 1986年から1992年までの7年間に来院した20歳以上の初診患者3521人のうち、全身疾患を伴う有病者の割合は38%で、循環器系疾患が 一番多く全疾患中35%を占め、その多くは高血圧症であった(表1)。   これら初診患者3521人のうち、初診時に血圧測定を行ったのは、男948人、女1041、合計1989人で、血圧測定率は、開業6年目の1991年で 80%であった。  収縮期圧は男女とも80才までは年齢に比例して上昇しているが、80才以上では男女ともやや低下が見られた。拡張期圧は男で60才まで、女で70才まで 上昇し、以後加齢とともに低下している(図1)。これを平成6年国民栄養調査平成8年版の血圧値と比較すると、収縮期圧、拡張期圧とも当院の方が女の拡張 期圧の60才と70才を除いて、ほぼ全体に渡り低い値を示したが、年齢による推移は同様な傾向を示した。  年齢階級別血圧分類では当院の高血圧者の割合は男女とも80才まで加齢とともに増加して、全体で男33.5%、女23.2%であった(図2)。  40才以上でアンケートおよび問診により高血圧、脳血管疾患、心臓疾患、腎臓疾患など、血圧異常に関連した疾患を有するものと、そうでない健康なものの 血圧は男女とも、収縮期圧、拡張期圧とも疾患群の方が有意に高かった。問診を加えない、アンケートに記載された高血圧に対するスクリーニングの効果につい て、検討を行ったところ、男は敏感度88%、特異度22%、陽性的中度63%、陰性的中度47%、女は敏感度80%、特異度21%、陽性的中度45%、陰 性的中度44%となり(表2)、男女とも敏感度は高かったものの、特異度が低く、アンケートからは、血圧正常者をも高血圧者と誤って判定してしまう確率が 高くなることが分かったが、臨床現場ではこのほうがより安全であるとも言える。また、男女ともアンケートに何も記入しなかったもののうち、約半数弱は高血 圧者だったことより、初診時の血圧測定の重要性がうかがわれた。

 

1)花沢秀美:高血圧患者の歯科治療に関する調査報告:全国保険団体連合会、東京、1988、1〜10.

 

2)Guidelines Sub-Committee of the WHO/ISH Mild Hypertension Liaison Committee : 1993 Guidelines for the management of mild hypertension; Memorandum  from a WHO/ISH meeting. WHO Bulletin 71(5) :503-517 1993

 

3)厚生省保健医療局健康増進栄養課監修: 国民栄養の現状 平成6年国民調査成績.平成8年版、第一出版、東京、1996、133-134頁. 

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