ありがとうワグナー!(9月20日)

 その夜は玄関のタイルの上から動けなくなったワグナーを抱きかかえて、和室に敷いた布団の上に移動したのでした。危篤状態なのかハーッ、ハーッと少し荒めの息をしていました。少しでも何かして上げられる事はないものかと、夜の11時頃、迷惑かと思いながらも友人の霊能の力のある敬子ママに電話してみました。3コールして出なかったので、寝てるかもしれないと思い受話器を置いたのでした。が、直ぐに電話のベルが鳴りました。敬子ママが掛け直してくれたのです。
「どうした?何かあった?」敬子ママの不安そうな声。
「うん、ワグナーが苦しそうだから何とかしてやる事が出来ないかと思って。」とわたし。
「分かった、良くなるよう祈るから待って。」
「いや、そうじゃないんだ。ワグナーが何か、して欲しい事がないか聞く事出来ないかな。」
「出来るよ、今コンタクト取ってみるから待ってね。」
暫くして、「可愛がってくれてありがとう。小さい頃、悪戯してごめんなさい。って言ってる。」
こらえていた胸の奥から込み上げて来るものが大きくなりました。
「ちょっと待って、ワグママと変わるから。」ワグママに受話器を渡しました。

 2時頃までワグママとワグナーの側に居ましたが、わたしは2階の寝室、ワグママはそのままワグナーの側に布団を敷いて寝る事になりました。

 2008年9月8日午前4時過ぎにワグナーは息を引き取りました。ワグママが4時過ぎにウトウトして、はっ、と気付くとワグナーの息がなかったそうです。その間、ほんの数分。
翌日の夜、敬子ママにその旨を連絡したら、「ワグママに最後に『オヤスミ』って言ったけど、あれワグナー君だったの。声のトーンが違ってたの分かったかしら。ママが寝るまで逝かないって決めてたのよ、ワグナー君。」続けて「可愛がられていたワンコに良くある事なのよ。」との事でした。

 その朝から、オネエやガキンチョ、そしてお世話になったワンコ友達に連絡したら、まずはワグナーカートを段取りしてくれた喫茶店のマスターとママさんが直ぐに駆け付けてくれて、「ワンコは亡くなった後は直ぐに悪くなるから。」と、取引先に電話をしてくれてドライアイスを届けてくれる段取りをしてくれました。その日のお昼頃には仙台からハッピーママとむとさんが駆け付けてくれました。あいにく、わたしは会社で抜けられない仕事があったので、むとさんハッピーママとは電話でしか話せなかったのですが、忙しいところを駆け付けてくれて本当にありがたかった。更に、ご近所のマロママや、まるパパ&ママサリーパパ&ママ&りんちゃんと、訪れてくれました。
その日からぞくぞくとワグナーへの花が届いたのです。皆さん本当にありがとう。

 その日の夜にオネエが帰って来ました。「お前、何て言って会社を休んだの?」
「祖父が亡くなったって休みを貰って来た。」と、オネエ。
暗くなりがちだったわたしとワグママでしたが、オネエが来てくれた事で随分と救われた事は言うまでもありません。結局、15日(敬老の日)の昼過ぎまで居てくれました。

 わたしの以前の職場の同僚が、鶴岡にあるペット霊園の園長さんをしていたので、その友人からお経を上げてもらいたいと、ワグナーの亡くなった夜に電話でお願いをしていました。

 翌日、ワグナーを車に運び入れ、わたしとワグママとオネエで鶴岡の霊園に行きました。心有るお経を読み上げてもらい、火葬する直前にワグナーと最後のお別れ。万感の想いが胸に込み上げました。

 ワグナーの体調に異変を感じてから、丁度1年ほど経ちます。最初は余命3ヶ月と言われたけど、1年も私達の為に頑張ってくれたワグナーでした。闘病生活はいろいろな事があったけど、事有る度にワグナーと私達の結束が強く成っていった様に感じています。その都度その都度、楽しかった。
毎日、毎日、包帯を取り替えてる間も、皮下点滴をしている間も、いつもいつもジッと動かないでいてくれたワグナーでした。
私達の手から食べ物を貰う時も、私達の手に自分の歯が当たっちゃいけないと気遣いながら、そっと食べ物を受け取るワグナーでした。

 いつの頃からか、頭に手を乗せ「ワグナー」って囁くと『ヴ〜ッ』って返事をしてくれるワグナーでした。何度も何度も「ワグナー」『ヴ〜ッ』「ワグナー」『ヴ〜ッ』「ワグナー」『ヴ〜ッ』と律儀に、わたしとの約束事を最後まで答えてくれました。

 散歩に行く時は、わたしとワグママと一緒に行くのを喜ぶワグナーでした。玄関の階段を降りたあたりで振り返り、玄関のドアをしばらく見つめるワグナー。ママが玄関から出て来ると、シッポブンブン嬉しそうに歩き出すワグナーでした。3人の散歩の時はリードを伝ってワグナーの嬉しさが伝わって来ました。

 沢山の心有る励ましや、お花をいただいた皆さんには、ご連絡も出来ずに申し訳ありませんでした。お花が届いたしるしを心ばかりのものですが、後程送らせて頂きますね。本当にありがとう。

 2001年の1月1日に飛行機に乗って我が家に来て、この7年と8ヶ月のワグナーとの生活は本当に楽しかった。多くのワンコ友達とも知り合わせてくれて、いろんなところに連れて行ってくれました。あそこにも行った、ここにも行った。そんなワグナーとの思い出が一杯です。
そして、中でもワグナーが私達にくれた最後の闘病生活の1年は、決して悲惨なものではなく、わたしには一番楽しかった思い出。きっとワグママも。

本当にありがとうワグナー! by ワグパパ&ママ

wagner's room